記事一覧
AIで声優・俳優の声を使う個人制作者も対象に。書面同意・クレジット・最長1年更新を求める業界指針(日本俳優連合、法律ではない)

ニュース

AIで声優・俳優の声を使う個人制作者も対象に。書面同意・クレジット・最長1年更新を求める業界指針(日本俳優連合、法律ではない)

協同組合日本俳優連合(約2,600人の俳優・声優が加盟)は2026年10月15日、芸能花伝舎での記者会見とともに「音声に関する生成AI利用ガイドライン」(Ver 1.0、全22条)を公表した。対象の「事業者」は法人・個人を問わず、個人事業主・フリーランス・同人クリエイター・個人配信者等を含む。法律ではなく業界の自主基準。数字・期間は指針上の定め。法的助言ではない。

何が起きたか

2026年10月15日、約2,600人の俳優・声優が加盟する協同組合日本俳優連合(日俳連)は、東京都新宿区の芸能花伝舎で記者会見を開き、「音声に関する生成AI利用ガイドライン」Ver 1.0(全22条)を公表した。対象の「事業者」は法人か個人かを問わず、個人事業主、フリーランス、同人クリエイター、個人配信者等を含む(第2条3項)。「声」には歌声、アドリブ、息遣い、笑い声なども入る(同条2項)。学習・生成・公開/利用の各段階で、目的を明示した書面による事前許諾を求める(第7〜9条)。数字や期間は指針が定める自主基準であり、法律上の義務ではない。法的助言ではない。

必要な背景

日俳連は発表ページで、日本に個人の「声」そのものを包括的に守る明文法がない、と説明する。肖像やパブリシティ権(氏名・肖像などの顧客吸引力を商業利用されない権利)の議論はあるが、音声の無断学習や合成音声の生成・利用を直接取り締まる包括法は未整備だ、というのが団体側の整理である。当サイト既報の2026年9月30日東京地裁判決は、人の声もパブリシティ権の対象になり得るとの一般論を示したが、差止は棄却、本件侵害は未判断だった(https://getkominami.com/ja/ai-music/2026-10-01-tokyo-voice-publicity-rights)。本指針は判決の置き換えではなく、学習から公開までの取引実務を条文化した業界ルールである。日俳連は「声の権利」の法制化を国に働きかけるとしている。

制作者への含意

効くのは、YouTube/ゲーム向けにAIボーカルやナレーションを載せる商用制作者と、声優本人と組んで声モデルを作る/売る個人だ。たとえば、声優に寄せたAIボーカルのBGMをゲームに載せる人、インディー作品のナレーションをAIで作る人、声優本人と組んでモデルを売る人が、最初に自分の立ち位置を切り分ける材料になる。指針に法的拘束力はない。生成ツールの利用規約を満たしても、この指針の書面同意を満たしたことにはならない。

  • 学習利用の可否(第7〜9条、第8条):学習・生成・公開の各段階で目的明示と書面の事前許諾。新規のデジタル・レプリカ(特定の実演家の声質・話調を再現する音声モデル/分身)やモデル開発は、着手の遅くとも7日前。同意済みモデルでのプロジェクト内生成は、遅くとも48時間前までに書面で事前通知。包括的な一括買取(いわゆるバイアウト)や口頭同意は、指針上は無効と扱う。声優に似せた声質変換で歌ものをYouTubeやゲームに載せる案件は、ここが最初の分岐になる。
  • クレジットと配信(第10条、第13条):AI生成である旨、AI事業者/製品/モデル名、元データを提供した実演家名をクレジット。実演家は氏名の非表示・変名を請求できる。政治・宗教宣伝、成人向け、名誉毀損用途は禁止事項。インディーゲームのボイスをAIで作る場合も、クレジット3点が指針上の条件。
  • 商用ライセンスと同意期限(第12条、第16条、第15条、第6条):同意は原則最長1年。長期のゲーム/アニメは合理的範囲で例外だが、無期限は認めない。出演料とは別に学習料・使用料・広告追加使用料・多言語化使用料を協議。声優本人と組んでモデルを販売する個人は、購入者向けのクレジット指定(テンプレート)も示す(第10条4項)。故人の声の新作利用は原則認めない(第6条)。多言語化は言語ごとに個別同意(第15条)。
  • 正規許諾モデルとそうでない場合(第20条):違反時は配信停止、学習済みモデル廃棄請求、無断利用開始日に遡る売上相当額の「特別損害賠償金」。ただし第20条5項(1):事業者が実演家の書面許諾を得て正規販売しているデジタル・レプリカ等を、一般利用者が動画配信や同人制作等の個人的表現の範囲で使う場合は、事前協議・特別損害賠償金の義務を負わない。条件は第10条クレジットと第13条禁止事項の遵守。特定の実演家を模倣しない汎用読み上げの個人利用は同項(2)で同趣旨。これは指針上の例外であり、法律上の免責ではない。

今日からやること

手元の案件フォルダで、(1)実在の声優・俳優に寄せた声を使うか、(2)正規許諾済みモデルかそうでないか、(3)クレジット3点と同意期限(原則1年)を1行で書き出す。

出典

一次は日俳連発表ページ(2026-10-15)と全文PDF Ver 1.0。補助はPR TIMES同日。二次は産経、日経、Anime News Network(2026-10-16)。クリック可能なURLは末尾。

出典: 協同組合日本俳優連合